続・祈りのいらない世界で
その後、Tシャツを購入した2人は早速トイレでTシャツに着替えた。



「あはは!イノリ、似合わない」

「うっせぇ!お前は中坊くらいのガキに見えるぞ」



もういい歳なのにキャラクターTシャツを着てハシャぐ2人。

夢の国は、大人も子どもに変えてくれる。




「名前を刻印してくれる革のブレスレットも欲しい」

「おう。今日は何でもワガママ聞いてやるから遠慮すんな」



ちょこちょこと色んな物を買ったり、アトラクションを回る2人。


名物の長い待ち時間さえキヨは楽しく思った。




「ひと口よこせ」



順番待ちをしている中、チュロスを食べているキヨに、あーんと口を開くイノリ。




「ひと口だけだよ?」



キヨがイノリにチュロスを差し出すと、イノリはパクッとかぶりついた。



「あ゛ーっ!!イノリのひと口大き過ぎるよ!!半分返せ〜」

「うまっ!全部食わせろ」

「そんなに食べたいなら買えばいいじゃんか!」



チュロスを取り合う2人。


結局半分こするハメになったけれど、キヨは楽しくて笑っていた。




「楽しいねって笑ったり、美味しいねって一緒に喜べるのって幸せだね」

「今日の美月、可愛いな」

「今日の?今日もでしょ」

「も、じゃない。の、だ」



どうして楽しい時間は過ぎるのが早いのか。


あっという間に夜になり、パークは閉園時間を迎えようとしていた。




2人は出口に向かいながら、それまでにあるショップに入り、お土産を買う事にした。



「陽ちゃんとフウにお揃いでコレ買おう!あと、缶が可愛いからこのお菓子も♪」



ベビー用品を見ていたキヨが振り向くと、隣りにいたはずのイノリがいなかった。



「…あれ?イノリ?」



閉園時間が近い為、ショップ内は混雑している。


キヨは人に揉まれながらイノリを捜した。




「イノリ〜?こんな所で迷子にならないでよ」

「迷子はお前だ」



人に揉まれて苦しそうなキヨを見つけたイノリは、キヨの手を引っ張った。
< 362 / 386 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop