続・祈りのいらない世界で
「ガラスのチャペルとクリスタルチャペルだって。凄い綺麗…」



翌朝。


朝食を済ませた2人は、キヨの希望でホテルの庭にあるチャペルへと足を運んでいた。




チャペルは一面がブラウンのシックなガラスのチャペルと、一面が硝子張りで高級感漂うクリスタルチャペルの2つ。



ドアが開放され、見学が自由になっているガラスのチャペルの祭壇に登ると、キヨはイノリにあるお願いをした。




「ねぇイノリ。結婚式の時言ってくれたあの言葉、もう一度言って?」

「はぁ!?やだよ。…あれはあの日限定だ」

「ケチ!」

「思い出は思い出として残しておけ。ほじくり返すな」



イノリはキヨに背を向けると、教会から出て行こうとする。

その背中にキヨは呟いた。




「…『お前の為に世界を失う事があっても、世界の為にお前を失いたくない。』……今でも、そう思ってくれてる?」


「美月より大切なもんなんかねぇよ。…それより早く行くぞ。荷物整理しねぇとだろ」



キヨの問いに即答で返してくれたイノリ。


それが嬉しいキヨは口元を押さえて叫んだ。




「いやーんっ♪惚れ直したっ」

「いやーん、じゃねぇよ!早く来い」




こうしてキヨとイノリは、一泊二日の新婚旅行を終えた。




ケンとカンナがくれた誕生日プレゼントの新婚旅行。




それが2人からの餞別になるとは

この時のキヨとイノリは知る由もなかった。
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