続・祈りのいらない世界で
「…ね。イノリは流れ星が見えたら何をお願いする?」

「ん―…そうだなぁ。お前は?」

「私は……」




『カゼを生き返らせて』


『また5人の幼なじみで生まれてこれますように』


『ケンとカンナ、フウと離れなくて済みますように』



どれも心からの願いとは違う気がした。





「私は“イの付く人のお嫁さん”って人生最大の願いが叶ったから、もういいかも」




大好きな人と結婚出来て

可愛い子どもも授かった。



これ以上、望みなんてあるのだろうか。




それでも星が流れるのを待っているキヨは、夜空を見つめながら隣りにいるイノリの手を握り締めた。




「イノリ、寒いので暖めて下さい」

「何だ、その口調は」

「可愛かった?」



キヨはニカッと笑うと、かかとを上げて背伸びをした。

反対にイノリは屈む。




寒い空気に包まれながら、キヨは唇に温かいものを感じていた。
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