続・祈りのいらない世界で
彼らの地元も田舎から徐々に変化を遂げていく。



一生変わらない景色なんて
この世界にはないのかもしれない。




「いつか河原や田んぼ、土手もなくなっていくのかな…」

「高校も最近は少子化の影響で合併したり、廃校になったりしてるしね」

「………時は残酷だね」



5人は思い出の場所がいつか知らぬ間に消されてしまう気がして、恐くなった。



空は毎日色が違う。
雨の匂いも
人の流れも

自動販売機に並ぶジュースの種類も煙草のパッケージさえも。


そんな身近なものさえ変わらないものはない。




毎日同じものなんか1つもない世界。

新しい物が生み出されれば古い物は消される。



新しく誰かが生まれれば誰かが死ぬように、その連鎖が当たり前の世界。




そこに生まれ落ちたからには、それを受け入れなくてはならない。




どうする事も出来ない5人は、ただ車の外の見慣れた景色を窓から眺めていた。




「今日はキヨの誕生日なんだ。辛気くせぇ顔するなよ」



運転しているイノリがそう呟くと、キヨ達は窓から視線を離した。




「私も19歳かぁ。早いなぁ」

「キヨ、誕生日一番早いのに一番子どもっぽいよね」

「ケンには言われたくない!!」



助手席に座っているキヨは、運転席と助手席の間から顔を覗かすケンの頬に軽くパンチした。




「ところで何処行くんだ?飯とかどうする?」

「そうね。キヨ何食べたい?」

「うーん…。トウモロコシ?」

「お前はそれしかねぇのかよ」



5人は悩んだ末、高校の時よく行っていたラーメン屋に行き、夕食を済ませ、田んぼや河原を回るとキヨの部屋へと向かった。
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