続・祈りのいらない世界で
「きよちゃん、今日合コン終わったら飯でも食いに行かない?連れて行きたいとこあんだよね」


「ご飯ですか?いいですよ。みんなにも言っておきますね」


「違うよ、2人でってこと」



男はキヨの頭をポンと叩く。




「…2人はちょっと…。みんな心配するだろうし…」

「今日だけでいいから。ねっ?」



男はそう言って笑うと、キヨの手を握って歩き出す。

するとキヨはイノリの存在に気付いた。




「…!!イノリ?」



キヨがイノリを見ると、イノリはキヨを冷ややかな目で睨みつけ、どこかに行ってしまった。





その後、カラオケを終えた一同はあまりにも盛り上がらなかった為、まだ夕方なのにお開きにする事にした。



「キヨ、みんなで何か食べて帰るでしょ?何食べたい?」

「ごめん、カンナ。みんなと先帰ってて。私、ちょっと…」



キヨがカンナにそう告げると、男がキヨの元にやって来た。




「ごめんね。今日だけきよちゃん借りてくわ。…悪いね、北山くん」



男は不機嫌な面持ちのイノリの肩を叩くと、キヨの手を繋いで歩き出した。



カゼとカンナがイノリを見ると、イノリは感心なさそうに煙草を吸っている。




「イノリ、いいの?引き留めるなら今よ」


「知らねぇ。キヨが人懐っこいのなんて今更始まった事じゃねぇし、いちいち気にしてたら俺が保たねぇよ。…俺はあいつの彼氏じゃねぇしな」


「………あの男、ケンのバンド仲間だよね?」




カゼの言葉を聞いたイノリは、他のバンド仲間と話しているケンに歩み寄った。
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