続・祈りのいらない世界で
「キヨの良さなんてお前には一生わかんねぇよ!!わからせたくもねぇ!!!!」



イノリは男を睨むと、しゃがみ込んでいるキヨに近寄り、抱き上げた。




「…イノリ」

「だから俺から離れるなっていつも言ってんだろ。人懐っこいその性格も今すぐ直せ。誰も彼処も愛想を振りまくな」



イノリはポンポンとキヨの背中を叩く。


キヨはイノリがいる事に安心すると、イノリにしがみついた。




「ただな、キヨ。1つだけ誉めてやる」

「…何?」

「お前は危なくなったらいつも俺の名前を叫ぶだろ。それは誉めてやる。…それでいい」

「でもっ…イノリ、私といたら趣味悪いだの色々言われちゃうよ?…もう名前呼ばないからほっといていいよ…」



キヨはイノリの腕から降りた。




「お前はバカか。…確かにキヨはチビだしバカだし泣き虫だし、手が掛かるガキだけどな、俺にとったらどんな女よりも可愛いんだ。
キヨの良さがわからないあの男がおかしいだけだ。……だから離れんな。俺の名前だけ呼んでろ」


「うんっ!!イノリっ!!」



キヨとイノリが抱き合っているのを見た3人は、視線を男に移した。




「…シュン、あれが男だ。お前みたいな奴にイノリをけなす権利はない。わかったんなら、バンドなんか辞めて心を入れ替えろ」



ケンがそう言うと男はケンを押し退けてホテルから出て行った。




「………ケン、どうしたの?」

「何が?」

「………何か今日のケン、カッコいいよ?カッコいいのはケンのキャラじゃない」

「何だとぉ!?カゼのバカぁ!!」




カゼとケンが騒いでいると、キヨを抱っこしたイノリが3人の元にやって来た。




「キヨ大丈夫?ごめんね、俺のバンド仲間が変な事して」

「ううん、大丈夫。みんなが来てくれて安心した…」

「………キヨには俺らと、イノリっていうヤクザがついてるから大丈夫。あ。ヒーローって言った方がよかったかな」

「カゼは黙れ!!」





そのまま5人は並んで歩きながらファミレスを目指した。
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