続・祈りのいらない世界で
「イノリ、私の彼氏みたいだったね」


「は!?何でだよ」


「だって…“俺の女”って言ったもん。嬉しかったなぁ」


「…あぁでも言わねぇとあの男が引かないと思ったからだよ。俺はお前とは付き合わねぇからな」




イノリの言葉を聞いたキヨは、胸に痛みを感じた。


昔からわかっていた事だけど、幸せを感じた後に言われるといつも以上に傷付く。




「…だったら優しくなんかしないで。私の事なんかほっとけばいいじゃない」



キヨはイノリを睨む。

そんなキヨをカンナ達は見つめていた。




「イノリが優しいのは知ってるよ?でも、中途半端な優しさは人を傷付ける事だってあるんだよ!?」


「…キヨ、俺はただ…」


「…私帰る。みんなだけでファミレス行ってきて」




キヨはそう言うと4人から離れ、1人駅を目指した。





「………イノリは罪な男だね」


「本当よ、イノリ。昔からあんたがキヨを大切にしているのは知ってるわ。でも、その気がないのならキヨに構い過ぎない事ね。必要以上の優しさは酷よ。…キヨの気持ちを知っているのなら尚更」



カゼとカンナがイノリを見ると、イノリは頭を掻きむしった。




「何でだよ。恋愛感情がなきゃ優しくしちゃいけねぇのかよ…」

「………違うよ、イノリ。そういう事じゃない」

「じゃあどういう事だよ!?」

「………好きじゃない女の子に思わせぶりな態度はとるなって事だ」





その頃、1人トボトボと歩いていたキヨ。



東京の街は、沢山のカップルが寄り添い歩いている。

カップルはみんな愛に満ちて幸せそうだった。





どうして?

誰よりもそばにいるのに
ずっと昔から隣にいるのに
この世の何よりも理解し合えているのに


どうしてイノリは私を選んでくれないの?




美人じゃないから?
バカだから?
色気がないから?
泣き虫だから?
イノリがいないと何も出来ない子どもだから?



……他に好きな人がいるから?
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