☆コードC☆


少しの沈黙が流れて、受話器越しの電車の音が聞こえてくる。こっちと同じ時間に電車が通っているのか、少しずれたタイヤの音。
重なりそうで重ならない不思議な感覚。
それでも涼香の心は安心し始めていた。

“あたしはずっと涼香を見てるから。”
「…………?」
“だから、分かるでしょ?どうしたら良いのかぐらい。今何処に行くか、何するか。”

上を見つめて停止する。
体が動かない。
汗がだらだらと流れてくる。
冷たい顔で睨む乃を、息を飲んで見ていた。

“歩道橋の上、見つかった?”
「乃、諦めたって、思ってる……。大丈夫だから、今日は、家に帰れないの、だから……。」

沈黙が続く。
怖い。
怖い。
怖い。
怖い…………!!

“何言ってるの?”
「へ…………?」
“帰ってなんて、言ってないよ?”
「え、じゃあ、どういうこと?だって、もう私は裕のこと好きじゃなくって、部活も…………。」
“言葉だけなら何でも言えるじゃん。嫌いとか、死ねとか。実行できないくせに皆そう言うの。今まであたし、涼香のことサポートしてきたじゃん。それだけじゃ足りない?”

よく言ってることが分からなかった。
とにかく、頭が混乱していた。

「…………乃?」
“言うとおりにしなかったら、あたしここから飛び降りるから。本当に、死ねる。初めての理解者だもん。死ねる。簡単だよ?孤独になるよりは楽だし。”

歩道橋から目が離せない。
乃が手すりをまたいでいく。

「乃……!?」
“ねえ、聞いてくれる?”
「やめて……!!」
“生きてたら、死ねって言われたって、皆に言いふらす事にする。涼香が死ねって言ったって。”
「…………!?」

汗と涙が流れ落ちる。
怖い。
怖い。
怖い。
怖い…………!!?

“ねえ、涼香…………。”
「いやああああああああああ!!!!」


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