小さな恋だった
私、鳥居日菜(トリイ ヒナ)は高校一年生。
私立一宮大学付属高校、通称一高に通っている。
一高はアルバイト原則禁止。
特別な事情がある"一部の生徒"以外はバイト禁止で、部活動には必ず所属しなければならない
規律の厳しい進学校だ。
とはいえ部活に所属するだけで顔をださない幽霊部員も結構いる。
魅力的な部活は色々あったのだけど、私が所属したのは"科学研究部"。
科学研究部に所属しているけれど、特別化学や数学がすきなわけではない。
保育園からの幼馴染の友達、鶯世理子(ウグイス ヨリコ)と鶯神奈子(ウグイス カナコ)からの強い勧めがあったから。
世理子と神奈子は一卵性の双子でよく似ている。性格容姿うり二つだけど、私は長年の付き合いで見分けがつく。
彼女たちは綺麗な顔立ちと可愛らしいぐりぐりとした猫のような目からか、演劇部から熱烈な勧誘があったのだけど、
「ぜったい僕たちは日菜ちゃんと同じ部活に入る!」と断り続け、一緒に科学研究部に入部した。
鶯姉妹が私を科学研究部に強く進めた理由は不純にして単純。
「かわいいんだから、もっとかわいくすればいいのに」
そういってくれた、一回しかあったことがない、保育園児の頃であった男の子に、科学研究部の部長がそっくりだったから。
もしかしたら、私を変えてくれたあの男の子かもしれない。
そう思うと、胸がきゅうっとつかまれたような気分になる。
幼いころから年齢のわりに背が高くて、男の子のような容姿がコンプレックスだった。
ただ、あの一言を投げかけてくれたあの男の子に出会ってから、私の世界は変わって見えた。
ちいさくてかわいいものを人目を気にせず集めるようになったし、おしゃれも積極的にするようになった。
今となっては170センチという、女子高生にしては高すぎる身長を武器にした服装をするようになった。
モデルのように背筋を伸ばして歩けるようになった。
そう、あの一言を言ってくれたあの男の子のおかげだ。