純白の君に、ほんのすこしのノスタルジアを。
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大学院へ進学したその年、父が家を出て行った。
原因は、母との言い争いだった。
俺の家は幼い頃からずっと両親が不仲で、年に一回は離婚騒動が起きては、結局離婚せずに終わる、というのを繰り返してきた。
だから今回も、なんだかんだで丸く収まるのだろう、と、俺たちはたかを括っていたのだ。
なぜ、父が今さら家を出たのか、俺にはなんとなくわかる気がした。
長い間母と諍いを繰り返してきて、それでも別れなかったのは、俺や妹が幼かったからだ。
俺や妹を、生活面で不自由させたくはなかった、というのが、両親の唯一噛み合っていたところだったからだ。
だが父はその日、出て行くことを決心した。
――俺は二十三歳で、妹は十九歳だった。
俺や妹も大きくなった。
両親が二人ではじめた自営業は軌道に乗って、いつのまにか主導権が母に移っていたので、父が単身で出て行ったところで生活費に困ることはない。
潮時、だったのだろう。
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