純白の君に、ほんのすこしのノスタルジアを。
言い淀んだ俺を、妹が睨みつける。
はっきり言え、と、その目が言っていた。
観念して、俺は父からのメールの画面を開いて妹に見せた。
「……父さん、出て行くって」
見ればわかることを、無意味と知りながらわざわざ口にすると、
「なんで」
と、短い問いを投げかれられた。
「なんでって……、前の喧嘩のせい、だろ?」
「もう帰ってこないの? 離婚したの?」
「いや、母さんはこのことを知らない。離婚はしてないはず」
俺も、同じことを考えた。
だから帰りの電車の中で、母さんにメールしたのだ。
父さんが今どこにいるかわかる? と。
知らない。店には来てないから、家にいるんじゃないの?
母さんの返事はそれだけ。
でもそれだけだからこそ、父さんが出て行ったことなんて知らないだろうということは、容易に想像がついた。
「そう。どこに行ったのかはわかんないの?」
嘘ついたら殺す、とでも言いそうな眼光で妹に睨まれ、俺は首をぶんぶんと横に振る。