純白の君に、ほんのすこしのノスタルジアを。
4
* * *
薄く眼を開けると、白い天井が見えた。
昔のことを思い出していたら、すこしだけ眠っていたらしい。
時間を見ると、それはたったの五分のことだったけれど、一晩ぐっすり眠った後のように目が冴えている。
あの後――父さんが出て行った後。
無視を決め込んだ妹と違い、母さんは半狂乱になって父さんを探した。
父さんの携帯に何度も電話をかけ、電話に出ないことに絶望して泣き崩れ、かと思ったら父さんの実家を含め父さんの知人を一人一人訪ね歩いた。
だが、どうにもならなかった。
父さんの実家や知人は、本当かどうかは知らないが、皆口を揃えて父さんがどこへ行ったのか知らないと答えた。
父さんは、携帯を変えていなかった。
ただ、母さんの番号だけを着信拒否に設定していた。
俺は――俺は、その気になれば父さんに連絡が取れた。
だけどそうしなかったのは、
父さんに連絡を取ろうとするたびに、妹の言葉が、いつだって通奏低音のように響いて、小さくても無視できない存在感を伴って、脳裏から消えなかったからだ。
――父さんは、会いたいと思っていないかもしれないでしょう。