純白の君に、ほんのすこしのノスタルジアを。



――でも、このままじゃいけない、と。



そう思ってしまう俺は、間違っているんだろうか。



だって俺は、見てしまったんだ。


気づいてしまったんだ。


五年前のあの日。



――父さんは、会いたいと思っていないかもしれないでしょう。



そう言った妹の目は、本の文字を見ていたようで、違った。


その視線は、本の上端の向こうに見えるベッドのシーツを、ぼんやりと見ていた。



無表情なその顔は、無表情であるはずなのに、ひどく空虚で。


ぽっかりと穴があいてしまったような。


深い喪失感を抱えているような、そんな顔だった。



数ヶ月前、妹と飲みにいったとき。



――呼んで、来なかったら、どうすればいいのよ。



そう言った妹の顔は、あのときの、空虚な顔だった。


だから。

だから、――ああ、だから、俺たちは進まないといけない。


どんなに小さな一歩でも、今より前に。



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