純白の君に、ほんのすこしのノスタルジアを。
俺は立ち上がって、のろのろと冷蔵庫まで歩いていく。
そして中の缶ビールを取り出すと、一気に飲み干した。
それからスマートフォンのメール画面を開く。
酔った勢い酔った勢いとつぶやきながら、メールを打つ。
五年ぶりの、父さんへ。
届かないかもしれない。
もしかしたらもう、メールアドレスを変えてしまったかもしれない。
でも、それでも。
妹が結婚すること。明日結婚式があること。日時と、場所。
事務連絡のような文面の最後に、「できればでいいから、来てほしい」と添えて、決意が揺らがないうちに送信を押した。
母さんは、今さら父さんに会いたくないかもしれない。
妹は来てほしくないかもしれない。
でも、そんなこと関係あるか。
ただ、父さんに、俺が、見せてやりたいんだ。
純白のドレスに身を包んで、幸せになる、妹の姿を。
――たぶん俺は、もうすこし先になるだろうから。
しばらく待ってみても、送信失敗の通知は来なかった。
メールは、父さんに届いた。
だから、すこし泣けた。