純白の君に、ほんのすこしのノスタルジアを。
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* * *
色とりどりのステンドグラスがきらめくホテルのチャペルの真ん中、大きなシャンデリアの下を、妹は新郎と並んで歩いていく。
純白の華やかなドレスを着て、大勢の拍手の音に包まれ、めったに浮かべない満面の笑みを見せた妹は綺麗だった。
絶対に本人には言ってやらないが。
式の間、妹はずっと笑っていた。
その後の披露宴で友人代表が泣きながらスピーチをしているときも、遠方の友人からのお祝い動画を流していたときも、母さんへの手紙を読むときも。
ずっと、幸せそうに笑っていた。
父さんは、来ていなかった。
式場中を探し回っても見つからなかった。
俺が父さんにメールを送ったことは母さんにも妹にも言っていないから、始終うろうろしている俺を、勘のいい妹はおそらく不審に思っただろう。
残念ではなかったと言えば嘘になる。
けれど、どちらかと言えば、晴れやかな気分だった。
だって俺は、自分にできることをした。
もし、父さんにメールを送らなかったら、きっと俺は今、後悔していた。
だから、もういい。