純白の君に、ほんのすこしのノスタルジアを。
ドレスの裾をなびかせて、テーブルとテーブルの間を縫って、ただ一心に、父さんのところへ。
あんなヒールでよく走れるな、と、俺がひどく場違いなことを思った矢先。
花嫁の体が傾いだ。
足がもつれたのか、そのまま前に倒れこむ。
――その体を、父さんが抱きとめた。
「……どこ行ってたのよ、ばかぁ!」
父さんに倒れこんだ勢いをそのままに、妹は父さんの胸を一度、力一杯殴った。
父さんの顔が、一瞬、痛みに歪む。
「心配したんだからぁっ!」
絞り出すように叫んで、後は言葉にならなかった。
妹は気が強くて、中学に上がってからは一度も泣いたところを見たことがなかった。
そんな妹が、父さんの胸にすがったまま、小さな子供のように大声をあげて泣き出した。
父さんは、――父さんは一度ためらいがちに腕を持ち上げ、だがすぐにまた下ろしてしまう。
そして、困ったような目がきょろきょろとゲストを見回し、やがて俺と目が合った。