不要なモノは愛
「あの!」


周りに多くの人がいる中で、抱き締められるなんて、有り得ないくらい恥ずかしい。

やめてもらおうと声を出す。


「ん?小夏、なに?どうした?」


またもや耳元で囁かれ、体がゾクッと震えた。

囁かれて震えるなんて、これもまた初めて経験する感覚だ。寒気とは違う震えだとは思うけど。


「近い」


「え?


「離れてください」


正体不明な感覚の答えを見つけるよりもまず離れて欲しかった。近い距離が恥ずかし過ぎる。


「でもさ…」


「何ですか?早く離れて…」


「後ろから押されているから、ちょっと無理なんだよね」


押されていて、無理?

どういうことか分からなくて、後ろに顔を向ける。私たちの後ろにたくさんの人がいるのが見えた。

短い時間でこんなに人が集まっていたとは、知らなかった。松野兄のすぐ後ろにも人がいる。だから、距離を空けるのが難しいのは理解出来た・

仕方ないと分かる。だけど…
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