不要なモノは愛
至福なひとときになりそうな予感。

でも、ふと思った。


「ねえ、待って」


美味しい食卓を想像している場合ではない。ビールを飲むと言っていたけど…


「車はどうするの?飲んだら運転出来ないでしょ?」


「あー。気付いた?」


気付いたって、どういうこと?何に?

飲んだら乗るな、飲むなら乗るな…というではないか。

車を置いて帰るというのだろうか。それとも、置いてから電車で来るのだろうか。

そうすると食べるのが遅くなってしまう。至福なひとときが、なんか遠ざかって行く気がした。


「近くにあるコインパーキングに止めるよ」


「はあ…」


止めるのは分かる。問題はその後のこと。

松野兄が珍しく目を細めて笑う。優しい笑顔で、心が温かくなる感じがした。

人の笑顔で心が温かくなるなんて、久しぶりの感覚だ。

私、どうしたんだろう…松野兄のことは嫌いのはずなのに。
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