不要なモノは愛
あれは恥ずかしいから、困る!

何だか体の力も抜けたし。あれじゃないキスならいいというわけではないけど、とにかくあれは困る。


「小夏。俺、車を止めてくるから荷物運べる?」


「荷物?あ、うん。大丈夫」


キスのことを考えている間に買い物を終えて、いつの間にか家にまで着いていた。

意識しているのは私だけなのかもしれない。買い物したものを冷蔵庫にしまい終えた時、玄関のチャイムが鳴る。


「はい。どうぞ」


「サンキュ。小夏が歓迎してくれていると思うと嬉しいね」


「歓迎?え?」


「そう。だって、どうぞって言ってくれたでしょ?だから、歓迎されている感じがする」


確かに「どうぞ」と言ったけど、ここに嬉しくなる要素があるとは思わなかった。

思わぬ一言で人を喜ばせてしまうものなんだな。

今日の松野兄は表情も言葉もいつもより柔らかくて、戸惑うばかりだ。
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