不要なモノは愛
恋というものをしたことがなかったけど、多分私は恋に近いものを感じているんじゃないかと思う。

ハッキリとは分からないけど、多分…。


「小夏?どうした?顎、痛いのか?大丈夫?」


「え?あご…?…いえ、痛くないです」


また考え込んでしまった私は、顎に手を当てて動きを止めていたから心配されたらしい。


「なら、いいけど。出掛けて疲れた?休んでいていいよ。俺が用意するから」


松野兄はジャケットを脱いで、私に手渡し、シャツの袖を捲る。


「いえ、大丈夫です。松野さんのほうが運転もしていたし、疲れていますよね?私が用意するから座っていてください」


キッチンに向かおうとする松野兄を制止して、急いでジャケットをハンガーにかけた。

疲れたといえば疲れてはいるけど、用意が出来ないほど疲れてはいない。しゃぶしゃぶだから、野菜を切るだけでよいし、松野兄の手を煩わせる必要はない。


「じゃあ、一緒にやろう」


それでも松野兄は腕捲りをしたままで隣に立つ。
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