不要なモノは愛
「いただきます」


缶ビールをあけて、グラスに注ぐ。

今夜はもう車を運転しないから、飲んでも問題はない。労いの意味を込めて、注いだ。


「お疲れさま」


「うん。ありがとう」


私のグラスに注ぎ返してくれたので、ありがたく頂いて、「乾杯」とグラスを合わせた。


「牛肉から食べるかな」


「私も牛肉から食べよう」


久しぶりのしゃぶしゃぶにテンションが上がる。

肉を鍋の中でゆらゆらと動かす。色が変わったら取り出して、ゴマだれにつけて食べる。


「うん、うまい!」


「美味しい!」


「奮発して良い肉を買って良かっただろ?」


「クスッ、はい」


美味しいものを楽しく食べると自然に笑顔になる。松野兄も優しい顔で笑い返してくれる。

ああ、そうか。

私はこういう日常を求めていて、必要としていたんだ。


「小夏、豚もうまいぞ」


「うん、食べます」
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