不要なモノは愛
急いで鍵を開けると、楽しそうな顔で笑う松野兄が立っていた。

近付いてきたと思ったら、髪をぐちゃぐちゃにされる。


「かわいいじゃん」


「やめてください」


去年から着ている色褪せたパジャマ姿にニットのカーディガンを羽織っている姿をかわいいと言われても嬉しくはない。せめて着替えが終わるまでどこかで時間を潰してもらえば良かった。

何で開けてしまったのだろう。


「あがるぞ」


追い返そうかと思っているうちに素早く靴を脱いでいた。やっぱり強引だな。でも、その強引さが今は嫌ではない。

仕方ないなと許してしまう。


「小夏ー。コーヒーもらうよ」


「クスッ。やっぱり図々しい」


「え?なんか言った?」


いいと言ってもいないのに、コーヒーを飲む松野兄を見ると笑えてしまう。優しいけど、強引な部分は相変わらずだ。


「せっかくの日曜だから、小夏とのんびりショッピングでも行こうかと思ったんだけど、会社に行く用が出来てしまって…」


「え?そうなの?」
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