不要なモノは愛
定時で仕事を終わらせ、更衣室で着替える。更衣室で着替えることも初めてだった。いつもならコートを着るだけで早々と帰るのに、今日は化粧直しまでしている。

だけど、やっぱりイブなんだ。他にも同じようなことをしている人が何人もいた。


「深見さんもこれからデートですか?」


「ええ、まあ」


「そのワンピース、かわいいですね!どこでディナーですか?」


「あ、分からなくて…」


「わあ、彼氏さんにお任せなんですね!楽しみですね!」


隣の課の後輩社員とこういう浮かれた話をしたのも初めてだった。今日は初めてのことばかりだ。

その後輩社員も華やかな服装だった。背中が開いているドレスに近いワンピースで寒くないのかと心配してしまいそうだったけど、暖かそうなコートを羽織って、出ていった。

人をのんびりと眺めている場合ではなかった。

私も急いでコートを羽織り、エレベーターへと行った。

そこで、ふと思う。着替えを持ってきたのはいいけど、こんな大きなバッグを持って、レストランに行くのはおかしいのではないかと…。
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