不要なモノは愛
私の方に冬悟さんの分を差し出そうとするから慌てて阻止した。美味しいものは一緒に食べて、美味しさを分かち合いたい。

「美味しい」と言えば、「うん、そうだね」と返ってくる。なんの特徴もない普通の会話だけど、心が温かくなる。

一人ではないと感じられることが嬉しい。


コトッ…と音がして、そこを見ると小さな赤い箱があった。置いたのは冬悟さんだ。

これは、もしかして…


「小夏」


「はい」


持っていたカップをテーブルに置いて、背筋を伸ばした。


「俺の家族になってください」


「冬悟さんの家族に?」


「そう。まずは二人からのスタートだけど、3人、4人と一緒に家族を増やしていこう」


一緒に家族を増やす…もう一人でいなくてもいいんだ。私にもまた家族ができる。


「はい。冬悟さんと一緒に家族を増やします」


「うん、ありがとう。左手を出して」


膝の上にあった左手をテーブルの上に置くと、冬悟さんが赤い箱から出した指輪を薬指に嵌めた。
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