不要なモノは愛
「ところで、小夏。小夏はいつも自分の容姿を卑下にしているけど、小夏はかわいいわよ」


「あ、俺も小夏さんはかわいいと思っています」


「ちょっとー、小夏だけなのー?私は?」


「秋絵さんは、えっと、その…きれいですよ」


春海くんは、消え入りそうな声でせっかく元に戻った頬をまた赤くして、答える。

春海くんは、きっと秋絵のことを意識していると思う。恋愛に関して無知の私でもそのくらいは分かる。照れながらも律儀に答える春海くんに秋絵までもが頬を赤くした。何だか微笑ましいな。

案外、この二人はうまくいきそうだ。秋絵があと少し押せば、春海くんは「うん」と言いそうな気がする。

でも、今日の秋絵は、春海くんの言葉で十分満足したようだ。浮かれる足取りで、お店を出た。

秋絵とは、駅で別れる。 少し飲み足りない感はあったけど、まだ週の真ん中だから、思う存分飲めなかった。社会人として、明日の仕事に差し支える飲み方をしてはいけない。
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