不要なモノは愛
初めて見る婚姻届を見てから、一樹を見た。一樹の名前はしっかり書かれている。この隣に私が書くの?


「小夏にそれ、あげるよ。決心がついて、結婚してもいいと思ったら、ここを書いて。したくないと思ったら、破り捨てていいから」


「うん…分かった」


一樹の気持ちが込められている1枚だ。

一樹が帰ってから、婚姻届を封筒にしまった。

しかし、これ…どうしよう。あげると言われて、要らないとは言えなかった。だからといって、私の手元に置いといても困る。

保管場所にも困って、自分の部屋に持っていき、正方形の白いテーブルに置いた。


「はあ…」


何だかため息が出る。一樹の気持ちは嬉しいけど、婚姻届は困る。真剣に考えなくてはいけないと思うけど、やっぱり結婚する自分が想像できない。

男と暮らすことが想像できない。子供と二人だけで暮らす図しか思い浮かばない。


一樹のことを考えながら、妊娠する相手を探す?

そんな器用なことは出来ない。

どうしよう…。

もらっても困るモノだ。


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