不要なモノは愛
一樹に眉間を指差されて、ハッと我に返った。

美味しいものを食べているときに、あの男のことを考えるなんて、どうかしている。全く、あの男が勝手なことを言うからだ。勝手にキスもするし…一体なにを思ってキスしてきたのだろう。


「あ!ねえ、一樹。一樹はキスしたことあるよね?」


「ゲホッ…は?いきなり何を聞いてくるんだよ?」


「ねえ、キスって、舌なんか入れないわよね?あれ、どういうつもりなのかな…」


「は?ちょっと、待って。小夏、誰とキスしたの?それも舌入れるとか、そんな濃厚なのを、誰と?あ、もしかして、まさか、松野さん?」


一樹は、飲んでいた味噌汁を吹き出しそうになったけど、無事だった。味噌汁だけは今夜私が作った唯一の料理だ。ご飯はキノコの炊き込みご飯を持ってきてくれていた。

それにしても何ですぐに松野兄だと分かったのだろう。やっぱりあの男は一樹から見ても、危険人物に見えるのかな。

会社の先輩だからと慕っているように見せていただけかもしれない。
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