不要なモノは愛
嫌いなモノ
駅を出た時、吹く風の冷たさに体が震えて、首を竦めて腕をさする。秋が深まり、寒くなってきた。カバンに入っているマフラーを出そうをファスナーを開ける。

ふわっ…

グレー色の肌触りの良いマフラーが肩から首にかかる。まだマフラーは取り出していないし、私のはグレーではない。

え?


「ほら、巻いておけよ。寒いだろ?」


「松野さん…」


松野兄が相変わらずの無表情でかけたマフラーに手を伸ばす。私の首に巻きつけようとしているのだろうけど、それはさせない。


「いりません。自分のがあるから、結構です」


かけられたマフラーを外して、松野兄の手に返して、白いマフラーをカバンから出した。


「それ、貸せよ。小夏はこっち」


首に巻こうとしたマフラーを奪い、先ほどのグレーのマフラーをクルッと私の首に巻きつけた。


「ちょっと!何を勝手にするの?」


松野兄は、勝手に奪った私のマフラーを黒のストライプスーツの上から華麗に巻いて、顔を埋めた。

その仕草に胸がドキンと跳ねる。
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