不要なモノは愛
聖斗くんが書こうとボールペンを握ったとき、誓約書が抜き取られる。取ったのは、松野兄で聖斗くんを睨んでいた。


「兄さん、返してよ」


「ダメだ。小夏は俺の子を産む。俺と結婚するんだよ」


「は?何をまた勝手なことを…」


松野兄の勝手な言い分に思わず口を挟んでしまう。松野兄が私に視線を移すが、変わらず鋭い目で見られる。怯みそうになるが、離さないでしっかりと見た。


「何で、聖斗がいい?何で、聖斗くんに決めた?」


「だって、聖斗くんは私の言う条件を理解してくれたから。それに、優しいし」


理由はちゃんと説明したのに、この期に及んでなぜまだ言うのか?

聖斗くんが誓約書にサインをしてくれたら、この交渉は成立するというのに、あと一歩のところで止まっている。本当にこの男は邪魔だ。

サインをしてもらわないと私の願いが叶わないというのに…。


「俺を納得させてからにしろよ」


「何で?関係ないでしょ?」
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