不要なモノは愛
私が言うと、聖斗くんも秋絵もうん、うんと頷いた。

松野兄だけが悪者のようになっている状況なのに、自分勝手な敵は味方がいなくても全然怯むことはなく、また睨みをきかせる。


「ねえ、聖斗くんのお兄さん。聖斗くんが了承しているし、なんといっても小夏が選んだのだから、お兄さんが反対するのはおかしいと思うんだけど」


この中で唯一部外者といえる秋絵が冷静に言う。私は心の中でそうだ、そうだ!と同意した。

松野兄は小さくため息をついて、睨みをきかせた目を緩めて、テーブルに視線を落とした。それから、ゆっくりと顔を上げて私を見る。


「仕方ないだろ。小夏を誰にも渡したくないのだから」


「え?」


「え?兄さん…そんなにも小夏さんのことを思っているの?」


私と同じように聖斗くんも驚く。誰にも渡したくない…自分勝手な男は独占欲も強いようだ。だけど、私は誰のモノでもないし、誰のモノにもならない。

だから、結婚だけでなく恋愛さえもしない。愛は要らない。与えてもらうつもりもない。
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