不要なモノは愛
だけど、だけど、少し切なく、少し照れるように言う松野兄の表情に心が揺れ動いたのは確かだ。

自分の心に変化が表れたのを感じたけど、認めたくない。


「いつも、いつも、勝手なことばかり言って…それ、返してください。サインをしてもらうのだから」


私の決心を揺るがさないで欲しい。今日、ここに来た一番の目的を達成させたい。

聖斗くんにサインをしてもらったら、あとは実行するだけだ。もうあと数日しかない。この実行日を逃したら、1ヶ月も待たなくてはならない。

我が子に会える日が遠ざかってしまう。

松野兄の奪われた誓約書を取り替えそうと手を伸ばしたが、手は空を切る。


誓約書は松野兄の手によって、素早く畳まれ、スーツのポケットにしまわれた。


「この話は終わりだ。とりあえず食べよう」


「クスッ。そうですね!お腹すいたので食べましょ。聖斗くん、頼んでもらえる?」


「はい」
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