不要なモノは愛
夕方、「小腹が空いたなー」と真後ろに座る主任の声が聞こえたので「食べませんか」とあげてしまった。

罪悪感はあったけど、主任が喜んで食べていたので良かったと思い込むことにする。

松野兄にあげた女性には申し訳ないとは思ったけど、悪いのは人にあげてしまう松野兄だ。あの男は人の気持ちなんて、考えないのだろうな。


そう、考えてないから、今もこうして平然と私の前に現れる。

家の最寄り駅の改札を出た途端、ものすごく疲れを感じた。何で、またいるのよ!

この前、私に貸してくれたグレーのマフラーを巻いている松野兄が、スマホを操作しながら改札の方をチラチラと見ていて、その視線が私を捉えた。

スマホをポケットにしまい、私の方へと近付いてくる。やっぱりただの偶然ではない。待ち伏せするのはやめて欲しい…。ある意味、ストーカーではないか。


「お疲れ。今日は小夏の家に行くよ」


「は?何でまた、勝手に決めているのですか?」


「寒いから寄せ鍋でもしよう」
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