欲しがりなくちびる
何度も最奥を貫かれて強く穿たれて、それでも懲りずに浩輔を誘い込もうとする朔の内側は快感に咽び泣いて淫猥な涙を溢しては、収縮してびくびくと痙攣する。

壊れる、なんて生易しいものじゃない。

それでもまだ僅かに残る理性が激しく揺さぶってくる浩輔の媚態を焼き付けたいと見上げれば、彼は薄らと額を汗で濡らし淫らな吐息を繰り返している。

浩輔も一緒に壊れてくれたらいいのにと思う。そうしたらきっと同じところへ行けるはずだ。

快感に侵されて魘されるように浩輔を呼べば、満足そうに微笑んで朔の髪を撫でる。その視線を素直に受け止められず彼の頭を掻き抱くように抱き締めれば、浩輔は朔の胸の中で切ない溜息を漏らす。もうこのままぐちゃぐちゃに溶け合って、二人はひとつになれればいい。それが二人の完成形だとしたら、どんなに素晴らしいだろう。

この胸の切なさは、いったい何を意味しているのか。浩輔と肌を重ねる度に、とめどなく涙が溢れて止まらなくなる。こんな自分を朔は今まで知らなかった。だから余計に恐くなる。

朔は、絶頂後の余韻に身を任せながら、皺が寄ったシーツの上に横たわったままでいる。先程まで浩輔もベッドにいたが、午後からの絵画教室の準備のためにシャワーを浴びに行った。朔は、今日ばかりは教室をお休みさせてもらうことにした。仕事の疲れよりも、浩輔との激しい情事でぐったりしてしまい、しばらく動けそうにない。

もしかしたら、もう浩輔がいないと一人では立っていられないのかもしれない。朔はふいにそう思った。自分は弱い人間なんかじゃないのに、そうじゃないと気付かされてしまう前に、浩輔から離れられる準備をした方がいいのかもしれない、なんて、離れられる訳もないのにそんなことを考えてしまった自分に力なく笑う。いずれにしても、最初の約束からタイムリミットは近付いている。

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