ビターチョコレート。
ープロローグ 
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「やっべ、薬切れた...」


真夜中の街中で俺は慣れない身体の痛みに悪態を吐く。
そして慣れた手つきで鎮痛剤を打つ。
薬が切れたらすぐに打つが今日に限って薬が切れていた。
家に帰ればある。だが、今自分がいるところから家まで軽く20分はかかる。
到底我慢が出来るとは思えない。
恐らく途中で誰にぶつかりでもしたら、迷うことなく相手を殺すだろう。



「随分と不機嫌そうな顔してるじゃないの。
なに?薬切れた?」

「わかってんなら寄越せ」


突然目の前に現れたこいつは俺の知り合いのヤブ医者。
一応情報屋としても仕事をしている。
俺がモルヒネ常備するようになった張本人。
まあ今切れた薬は出会う前から常用してたけど。


「薬はやめろって言ってるだろ?」

「しょうがねえだろ、今更やめられるか」

「...薬切れるたびにモルヒネ打ちながら、
すっげえ不機嫌そうな顔してるのに?」

「うっせえ、ヤブ医者」

「おー怖い怖い
まあ、殺されたくないからやるけど」

「そうそう、さっさと寄越せば八つ当たりなんてしねえよ」

「八つ当たりとかタチ悪っ」


乱暴に受け取った注射器を刺す
すると、すぐに溢れんばかりの高揚感、快感が全身を包んだ。


「はぁ、やっぱこれないとやってらんねえなあ」

「全く、そのうちぱったり死んでも助けねえからな」

「わーかってるって。」


ヤブ医者に手を振って帰路に着いた
明日は仕事もないし、ゆっくりしよう。
依頼が来たら気分で決めよう。
そんなことを思いながら足を進めた。
薬のおかげで上機嫌で歩いていれば、路地から女の声が聞こえる。
どうせ売春か何かだろうと思って通り過ぎようとした。


「待って!あの、たすけて!!」

「ああ?
こんな時間に出歩くっつーことは襲ってくださいって言ってるようなもんだろ?」

「確かに、こんな夜中に街中ほっつき歩くやつは余程のバカか
俺みたいなイカれた人間だけだろうなあ」


想像通り女が男に襲われていた。
だが、珍しく気分がいいから、助けてやることにしよう。
しかし相手はただの一般人だ。
到底楽しめるとは思えない。


「にいちゃん自分でイカれた人間って言うなんて変わってんなあ」

「ちょっとある世界じゃ有名なもんでね...残虐の悪魔(Cruel devil)って聞いたことあるか?」

「いんや、知らねえなあ」

「じゃあ先に行っておく...死んでも文句言うんじゃねえぞ」


この女を助けても俺は得をしない。
まあ恩を売って金を巻き上げるくらいしか使い道はないだろう。
顔がいいから他にもできそうだが、売るのは専門外だしな。
さて、どうするか...
とりあえず、ポケットから愛用のナイフを取り出して一線を描いた。


「ぎゃあああああああああ」

「そんなに喜ぶなよ」


まあこいつは小物だ。
このまま放っておいても死ぬだろうが、
仕事柄殺さずに放置って訳にもいかねえんだよな。
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