わたしはあなたを、忘れない

私との関係









「早瀬さん、ここにいたんだ」




あれから早瀬さんは。





「鈴原さん」





みんなの視線を気にしながらも、


何とか学校に来てくれている。


班での活動もスムーズにいき、


一緒にいることも増えた。


だけどなぜか、早瀬さんは


どこか遠慮している。


私に話しかけてくれる、


クラスの友だちに。





「いいの?クラスの子たち、鈴原さんとお昼食べたそうにしてたのに」





「あー、うん。いいのいいの」





早瀬さんは、少し息を吐き、


ありがとうと言う。


私は意味も分からず、


笑って見せた。


私が一緒にいたいと思うから、


早瀬さんといるんだ。


他の人にどう思われようと、


全然構わない。






「もうすぐ遠足だね」





「そうだね。最近少し楽しみになってきたんだ」






結局自由行動の案も変えず、


提出したまま。






「あ、そうだ。早瀬さん、自由行動どこ行きたい?」





「自由行動?」





「あ、説明聞いてなかったっけ」





私は遠足の日に、


自由行動があることを説明した。






「椎名くん、適当に書いて出せって出したままなの。きっと池上くんは、自分の行きたい所に行くと思うし」





「行きたい所…か、」





うーん、と悩んだ後。




「美味しいご飯が食べたい!」





嬉しそうな顔をするものだからつい。






「ぷっ……はは、あははっ」






私は大笑いしてしまった。


美味しいものを食べたいと思ったら、


こんな顔するんだ、なんて考えると。


早瀬さんは、ものすごく可愛くてたまらない。






「ど、どうしたの…、鈴原さん?」





「ううん。何も…、面白いね、早瀬さんって」





私を見てあたふたする早瀬さん。


いつもこんな空気が私を包む。


気がつけば、この時間が、


私の中で心地のいいものになっていた。







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