わたしはあなたを、忘れない
目的地に着くと、
午前中、街の歴史について勉強。
全然興味がないからか、
全く頭に入らない。
なのに、隣で必死に聞こうとする
早瀬さんの姿を見て、
私は1人感心していた。
「時間までには戻るように」
クラスごとに、班で整列。
学年主任の一言で、
みんな一斉に解散。
どこに行こうか。
なんて考えていた時。
耳に飛び込んできたのは、
周りの人が、椎名くんを呼ぶ声。
「翔琉、行こうぜ!」
「えーっ、じゃあ私たちも混ぜてっ」
さっきまでそこにいた椎名くんはいなくて。
「池上くんも、いないね」
宣言通り、池上くんも
1人でどこかへ行ってしまった。
「2人で行こう。美味しいご飯、食べるんでしょ?」
「うん!行こう!」
いいんだ、別に。
分かってたことだもん。
椎名くんがいないなんて、
いつものこと。
なのに、寂しいと思ってしまう。
「私、どこが有名か調べたの!」
「本当?ごめん、私も調べようと思ってたんだけど」
「いいの。私が行きたいって言ってたんだし」
そう言いながら、
調べた紙を私に見せてくれる。
徒歩で行ける距離にあるその店に、
少し重い足取りで向かった。
「この辺ね、海産物が有名なんだって」
「そうなの?じゃあ、海鮮丼とか美味しいのかな?」
「海鮮丼いいね!食べたい!」
発言通り、私も早瀬さんも、
違う種類の海鮮丼を食べ、少し
交換して食べ合いっこすることに。
終始笑顔の早瀬さんのおかげで、
さっきの寂しさがどこかへ
行った気がした。
「どこ行く?」
「…何があるのかな」
お昼のことしか考えていなかった
私たちは、食べた後のことを考えてなくて。
当てもなくぶらぶら歩いて、
散策することに。
「…ね、潮のにおいしない?」
「……する。海?」
2人とも、行きたい気持ちが
重なって、駆け足で潮の香りが
する方向へ向かった。
「海だぁ」
「本当にあったね、海」
砂浜の上に下り、
私も早瀬さんも両手を広げた。
同じ動きをするお互いを見て、
可笑しくて笑う。
「ね、鈴原さん」
「ん?」
向こう側に同じ学校の人たちが
いるのを横目に、砂浜に腰を下ろす。
波の音を聞きながら、
静かに早瀬さんは話し始めた。
「私、ずっと学校が怖かったの」
早瀬さんは、1つ1つ丁寧に、
学校に来なくなった理由を
話し始めた。