わたしはあなたを、忘れない





「1年生の途中から、こっちに引っ越してきてね。クラスも学年のみんなも知らない人ばかりだし、グループも出来てて、なかなか入れなくて」




今にも泣き出しそうな早瀬さん。


きっと苦しいことを、


話してくれてる。


私に、打ち明けてくれてるんだ。






「前の学校と今の学校と、全然違うの。前の学校はみんな静かで大人しくて。でも今の学校はみんな元気で、せっかく話しかけてくれても、上手く返せなくて」





早瀬さんがそう思うのも無理はない。


ずっといる私だって、


違和感を感じたり、


居場所がないんじゃないかって。


そう考えたりするんだから。





「それで、いつの間にか、人と話すのが怖くなっちゃった」




「そうだったんだ」




「でもね、今日、本当に来てよかった」






遠くを見ながらそう言う早瀬さんの


言葉に、1つも嘘や無理はなかった。


嬉しそうに笑う、その笑顔を見て、


私もすごく嬉しくて。






「鈴原さんと椎名くんが来てくれて、本当によかった」




「早瀬さん……」




「…結子ちゃん、って、呼んでいいかな?」






控えめに、恥ずかしそうに、


そう言う早瀬さんに。


嬉しさが込みあがった。






「もちろんだよ!」




「ありがとう」




「小晴って私も呼びたいな」




「うん!嬉しいっ」





お互い顔を見合わせて、


笑顔を向け合う。


小晴が笑うから、


私も笑える気がした。






「海、入ろっかな」




「冷たくない?」




「平気平気!」





なんて言いながら、


私はローファーを脱ぎ、


靴下も脱いだ。





「気持ちいいっ。海なんて久々だよ」




「結子ちゃん、気をつけてよ?」




「うんっ!大丈っ…」






完全に調子に乗った私。


楽しい姿を見せようと、


辺りを駆け回った時。


足に激痛が走って。






「結子ちゃん!」




「痛たたた…」





見るとそこにはビンの大きい


かけらがたくさん落ちていて。


私は見事にそれを踏んだ。


踏んでしまった。






「結子ちゃん、血が…。どうしようっ…」




「小晴、大丈夫。全然痛くないから」





そう言って立ち上がり、


数歩歩いてみたものの。


少し足首が痛い気がした。






「手当てしないと。結子ちゃん、バス戻ろう?」





「大丈夫。本当に痛くないから!」





手当ても大事だけど、


バスに戻ったら絶対


休んでろと出してもらえない。


せっかく楽しみにしてた小晴が、


がっかりしちゃう。


だから…。





「小晴、本当に平気だから!違う所、行こっ…」





「ばっか…」





耳元で小さくそう聞こえたかと思うと。







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