わたしはあなたを、忘れない






「ごめんね、すぐ言えなくて」




今まで誰にも言えなかったのは、


これ以上、椎名くんに


嫌われたくなかったから。


いつバレるか分かんない。


そんな中で生活したくなかったから。


だけど、小晴は。小晴だけは。


大丈夫。そう思えたから。





「結子ちゃんっ…!」





すると小晴は、


少し泣きながら私に


抱きついた。





「ど、どうしたの?」




「ううん、何でもない」





よしよしとあやしながら。


頭の中では、椎名くんが


どうしてるか気になってしまう。






「でも勘違いだったんだ」





「何でそう思ったの?」





不思議で仕方なかった。


だって、好きかどうかを聞くのは


まだしも。


付き合ってるかなんて。






「だって」






小晴の口から出た言葉は。






「椎名くんを見る結子ちゃんの目も輝いてるし」






予想もしない。






「結子ちゃんを見る椎名くんが、すごく大事なものを見るような目してたから」






驚きの発言で。


私は開いた口を塞げず。






「嘘だよ…、だって」






だって、椎名くんは、


私のこと嫌いなんだよ?


いつも遠くにいて、


話すことのない人なのに。


そんな人が私を好きだとか、


絶対ありえない。







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