わたしはあなたを、忘れない
それから1週間が経ち。
「お前らの班だけだぞ、自由行動の計画表出てないの」
「すいません」
私はというと、
職員室に呼び出され。
遠足の計画表のことで、
怒られていた。
「金曜日までに出せ。いいな?」
「…はい」
職員室を出て溜息。
金曜日って、明後日じゃないの。
池上くんに聞いても、
1人で…って言うし。
椎名くんには、
相変わらずで声がかけられない。
「鈴原!」
職員室を出てすぐの所で、
担任に呼び止められる。
まだ何か用事?
そう思いながら振り向くと。
「放課後、早瀬の家に行ってやってくれないか」
意味不明のことを言われた。
何で、私が。
「何で私なんですか」
「同じ班だろ」
「先生が行けばいいじゃないですか」
「そう言うなよ。頼んだぞ~」
嫌とも言わせず、
担任は職員室に戻って行った。
何なの、本当に。
同じ班だからって、
何で私なの。
「結子、もう帰るの?」
「うん、ちょっと寄る所が出来たから」
私は鞄を持つと、
みんなに手を振って教室を出た。
「この辺かな…」
担任に見せられた地図と住所を頼りに、
知らない場所を彷徨う。
早瀬さんって、どんな子だっけ。
話したこと、あったっけ。
「ここだ」
玄関にある表札に、
早瀬という字がある。
住所も合ってる。
きっとここで合ってるはず。
「出てくれるかな…」
緊張しながらもインターホンを鳴らす。
少し間が開いて。
「はい」
インターホンから声がした。
「あの、私小晴さんの同級生の者ですが」
早瀬さんの下の名前、何だっけ、
なんて考えながらそう言うと。
「誰とも会いたがらないんです。帰ってください」
その返答と共に、
何を言っても答えが返って来なくなった。
会いたがらないのか。
というか、せっかく来たのに、
顔も見れないの。
来た意味…。
仕方なく帰ることに。
次の日、また同じ時間に
尋ねてみたけど。
やっぱり出て来てはくれなかった。