わたしはあなたを、忘れない





「各班で話し合え~」




金曜日、6限目。


遠足の話し合いの時間。


他の班は自由行動の、


時間とか詳しいことを


考えてるのに。


私たちは、まだだんまり。





「鈴原」




そこへ担任がやって来て。





「早瀬、どうだった?」





何食わぬ顔で尋ねてくる。


このやろう。


自分も行けばいいのに。





「まだ話せてません。今日も行ってみますけど」




「おー、頼むわ」





頼むわじゃないわよ、全く。


早瀬さんのこともあるし。


自由行動の計画もあるし。


どうしたら…。





「お前、早瀬の家、行かされてんの?」





突然。


隣にいる椎名くんが、


私にそう聞いて来た。





「そう…です」





言葉に詰まって、


どもって答えた。


顔が見れない。


少し怖い。





「何で?」




「…だって、」




最初先生に言われた時は、


何で私が、って思った。


だけど、早瀬さんの家に行ってみて。




「せっかく班が一緒になったんだし、一緒に遠足楽しみたいと思って」





素直にそう思った。


1人ってきっと、寂しくて悲しい。


本当はみんなといたくて、


だけどいれない。


そんなことを考えてるとしたら、


私、分かる気がするから。


来年は同じクラスじゃないかもしれない。


この班になることは、


もうないかもしれない。


だったら今のうちに、


動くしかない。





「俺も一緒に行ってやる」




「……へ」




「あと、自由行動はお土産見るって書いとけ」




「でも…」




「いいから」





有無を言わさない目に、


反論出来ずに紙に書いた。


その紙を椎名くんは、


くしゃっと掴むと。


少しだるそうに担任に


提出しに行った。





「やばい…」





どうしよう。


話せた。


それに、一緒に、


行ってくれるなんて。


思ってもみなかった展開。


早瀬さんには悪いけど。


少し、いやだいぶ、


嬉しすぎる。






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