眠れぬ夜をあなたと
「ミ~コさん?」
彼が膝を立てたせいで歪んだベッドは、ググッとくぐもった音を出す。
その振動で、肩のラインに切りそろえている私の髪が、Tシャツの上を軽く跳ねた。
「……ケイ」
ケイこと辻 圭介(つじ けいすけ)は、吸い始めたばかりの煙草を私の指から抜き取る。そして骨ばった長い指で、サイドテーブルに置いてある灰皿にそれを押しつけて、火を消した。
「今日も抱っこ?」とケイがいつもと同様に、私の頭に声を落とすから、私も「うん」と返事をする。
この何ヶ月か、2人の間で定着したやりとりだ。
「美湖さんのためなら、なんでもするよ?」
こんな戯れ言を吐くわりに、私を背後から抱え込んだケイの腕は、いつもぎこちない。
そのたびに、彼の中の罪悪感や戸惑いが見え隠れして、居心地の悪い心地良さを感じてしまう。
「……口説き文句にしてはひねりが足りな~い。そういうアフターが欲しいんなら、ちゃんとしたオスを選ぶし。にわかホスト君」
……なんて、茶化したものの。
彼の擦れていないところが気に入っているのだから、私も意地が悪い。
彼が膝を立てたせいで歪んだベッドは、ググッとくぐもった音を出す。
その振動で、肩のラインに切りそろえている私の髪が、Tシャツの上を軽く跳ねた。
「……ケイ」
ケイこと辻 圭介(つじ けいすけ)は、吸い始めたばかりの煙草を私の指から抜き取る。そして骨ばった長い指で、サイドテーブルに置いてある灰皿にそれを押しつけて、火を消した。
「今日も抱っこ?」とケイがいつもと同様に、私の頭に声を落とすから、私も「うん」と返事をする。
この何ヶ月か、2人の間で定着したやりとりだ。
「美湖さんのためなら、なんでもするよ?」
こんな戯れ言を吐くわりに、私を背後から抱え込んだケイの腕は、いつもぎこちない。
そのたびに、彼の中の罪悪感や戸惑いが見え隠れして、居心地の悪い心地良さを感じてしまう。
「……口説き文句にしてはひねりが足りな~い。そういうアフターが欲しいんなら、ちゃんとしたオスを選ぶし。にわかホスト君」
……なんて、茶化したものの。
彼の擦れていないところが気に入っているのだから、私も意地が悪い。