眠れぬ夜をあなたと
あけてあけて、とベッドのはしに腰掛けて言い募るケイの勢いに押される形で、言われるがままにテープをはがし、中身を取り出した。
「……時計だ。壁掛けの」
「これね、目が秒針代わりになってて動くんだよ。ほら、左右に。見て見て」
ケイが電池を入れると、猫顔の壁掛け時計が勢いよく動き出した。
「このあいだ、そこの時計、電池換えても駄目だったでしょ? これ見た瞬間、美湖さんの顔が浮かんでね、買っちゃったんだ」
丸く色の変わった壁紙を見上げて、この間ケイが来たときのことを思い出す。
時計が止まっていることにめざとく気がついたケイは、電池交換してくれたのだけれど、その時計じたいが壊れていたらしく動かないままだった。
その夜は、時計が動かないことよりも時計をのけた跡の壁紙が恰好悪い、なんて話しをしながら眠りについた記憶がある。
そんな何気ない日常をケイが覚えているなんて。
「ね、美湖さん。壁に付けてみて良い?」
すで取りつける気満々に見えるケイなのに、律儀にお伺いいを立ててから、ダイニングテーブルの椅子を持って来た。
取りつけられた時計はユーモラスだった。キョロキョロと視線を左右に振っているさまは、好奇心旺盛なケイとダブって見える。
「……時計だ。壁掛けの」
「これね、目が秒針代わりになってて動くんだよ。ほら、左右に。見て見て」
ケイが電池を入れると、猫顔の壁掛け時計が勢いよく動き出した。
「このあいだ、そこの時計、電池換えても駄目だったでしょ? これ見た瞬間、美湖さんの顔が浮かんでね、買っちゃったんだ」
丸く色の変わった壁紙を見上げて、この間ケイが来たときのことを思い出す。
時計が止まっていることにめざとく気がついたケイは、電池交換してくれたのだけれど、その時計じたいが壊れていたらしく動かないままだった。
その夜は、時計が動かないことよりも時計をのけた跡の壁紙が恰好悪い、なんて話しをしながら眠りについた記憶がある。
そんな何気ない日常をケイが覚えているなんて。
「ね、美湖さん。壁に付けてみて良い?」
すで取りつける気満々に見えるケイなのに、律儀にお伺いいを立ててから、ダイニングテーブルの椅子を持って来た。
取りつけられた時計はユーモラスだった。キョロキョロと視線を左右に振っているさまは、好奇心旺盛なケイとダブって見える。