眠れぬ夜をあなたと
年齢不詳。
そこは、叔父と共通しているところだ。でも、それ以外は全くと言って良いほど、共通項がないふたり。ネクタイ姿の叔父とつい見比べてしまうけれど、かれこれ二十年以上のつき合いで、とても馬が合うらしいのだ。
「はぁ、そうですか」
部下を鍛えるなんて言いながら、仕事を丸投げしてるのかと思ってたけど。
「ほら。成本が異動になっちゃってから即戦力が抜けて、痛手だったわけよ。その上、代わりが新人君でさ、仕事が倍よ、倍」
「半年以上も前の話でしょ。今ごろ、なにを言ってるんですか」
私は一・五人分くらいのスペースをあけて、志垣さんの座るソファに浅く腰を下ろした。
「アレ。美湖ちゃん、ちゃんと知ってたの」
「知ってるもなにも……。この半年『リリィ』の映画紹介、書いてますよ。私」
『リリィ』は成本さんが異動した部署で発行している雑誌の名前だ。二十代全般の働く女性向けの月刊誌で、付録重視の女性誌の中にあって記事重視を貫く、今時奇特な雑誌だ。
それだけに編集部の面々は、世の女性たちの張り巡らせたアンテナがピリリと反応するような記事を追求しているようだ。
「へーえ? 映画ねぇ」
そりゃ初耳だ、と志垣さんは意味深に笑った。
「じゃあ、今度の企画にコイツの店をわざわざ捻じ込まなくてもよかったかねぇ」
志垣さんはニヤニヤしたまま煙草の火を揉み消した後、テーブルの上の琥珀色の液体に口をつけた。
……また、このおっさんか。
その言葉にピンと来るものがあった私は、重い息を吐いた。
そこは、叔父と共通しているところだ。でも、それ以外は全くと言って良いほど、共通項がないふたり。ネクタイ姿の叔父とつい見比べてしまうけれど、かれこれ二十年以上のつき合いで、とても馬が合うらしいのだ。
「はぁ、そうですか」
部下を鍛えるなんて言いながら、仕事を丸投げしてるのかと思ってたけど。
「ほら。成本が異動になっちゃってから即戦力が抜けて、痛手だったわけよ。その上、代わりが新人君でさ、仕事が倍よ、倍」
「半年以上も前の話でしょ。今ごろ、なにを言ってるんですか」
私は一・五人分くらいのスペースをあけて、志垣さんの座るソファに浅く腰を下ろした。
「アレ。美湖ちゃん、ちゃんと知ってたの」
「知ってるもなにも……。この半年『リリィ』の映画紹介、書いてますよ。私」
『リリィ』は成本さんが異動した部署で発行している雑誌の名前だ。二十代全般の働く女性向けの月刊誌で、付録重視の女性誌の中にあって記事重視を貫く、今時奇特な雑誌だ。
それだけに編集部の面々は、世の女性たちの張り巡らせたアンテナがピリリと反応するような記事を追求しているようだ。
「へーえ? 映画ねぇ」
そりゃ初耳だ、と志垣さんは意味深に笑った。
「じゃあ、今度の企画にコイツの店をわざわざ捻じ込まなくてもよかったかねぇ」
志垣さんはニヤニヤしたまま煙草の火を揉み消した後、テーブルの上の琥珀色の液体に口をつけた。
……また、このおっさんか。
その言葉にピンと来るものがあった私は、重い息を吐いた。