眠れぬ夜をあなたと

ケイは年若い大学生二年生の男の子だ。
まだ頭に殻がくっ付いてんじゃないかと思うくらいのひよこちゃん。

もし彼がイマドキの世慣れした大学生ならば、私だって自分のテリトリーに入れたりはしなかっただろう。

このひよこは、自分の目指した大学へ行くため親の援助を受けずに奨学金を利用したものの、普通のバイトではどうしても生活が出来なくて、お水の世界に片足を突っ込んだようだ。

それでも授業を優先するには、女子大生やOL客が中心の一部営業を、週に2、3回こなすのが精一杯らしい。

彼がアルバイトをし始めたホストクラブというのが、そこそこ由緒ある実家から飛び出した私の叔父、三谷 雅樹(みたに まさき)が経営するの店の一つ『クラブ・セレナーデ』だった。

柔らかな触り心地の茶虎の猫みたいな髪を持ち、クルリとした目元と長い睫毛が印象的な可愛いらしさの目立つ男の子は、客のお姉様方の癒やされたいハートをわし掴みまくったのである。

ただしマスコットの笑顔は、厄介事も惹きつけた。

あれよあれよと言う間に人気者になってしまった誠実な男の子は、誰に対しても不誠実な対応をすることなんてできなくて。
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