眠れぬ夜をあなたと
「ええっ、もう終わりなの?」

「ケイ君、君の好奇心は満たしてあげられたと思うんだけど」

私のことを知りたいなんて、好奇心というより野次馬根性じゃないのか、と密かに思っている。

長机の向こう側にある倉庫兼更衣室へ行こうとした私に「待って」とケイは手を伸ばした。

「……ね、それ本物?」

ケイは首を傾げ、私の深いスリットの入ったスカートの中を指差す。

「やらし~。どこ見てんのよ」

ひと昔前の女芸人みたいな言葉を吐いて、ケイの肩口を突いてみても、彼の好奇心は私の足から離れない。いや、正確には、私の内腿のペガサスに興味が沸いたようだった。

「もっとよく見せて、美湖さん」

「やだ」と答える前に私は彼に片足をひょいと持ち上げられてしまう。バランス悪く私のお尻が長机にぶつかったせいでコーヒーカップの中身が机の上にはねたけれど、彼はまったく気にしていない。

普段、男の力を感じさせない人間に軽々押さえ込まれて、軽いめまいを覚えた。

「……やっぱり本物なんだ。前に見えたときはてっきり、ストッキングの柄かと思った」

片手で軽く覆えば隠れるような大きさのタトゥーを、ケイはまじまじと覗き込む。

ケイの息に内腿をくすぐられるとその顔の近さが妙に照れくさくなって、膝頭で彼のおでこをゴツンと突っついた。

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