眠れぬ夜をあなたと
志垣さんはどこまでも私のプライバシーを侵害したいらしい。私に平穏の欠片も掴ませたくないと、躍起になる。
―― ケイはそんな子じゃないのに。
どぎつい仮装をしていることも忘れて表情が揺れないよう目に力を込めると、長いつけ睫毛がまぶたにつき刺さり、またもや目の周りが痒くなってきた。
自分の慌て具合が妙におかしくて、情けなくて。咳払いをひとつしてから言うべき言葉を探した。
「……志垣さんにしては、いい話持ってきたじゃないの。バイトだって雑用だって、チャンスでしょ? ケイの近い将来を考えたら悪くないと思うよ」
コネは多く持っていたほうがいい。それにうまく潜り込めれば、ただ机の上で学ぶよりも実りが大きくて、それだけ可能性が広がるのだ。
「……でも今のバイトが時間的に無理だ」
「ケイは何になりたくて、お勉強してるのよ? 生活も大事だし、学校も大事だろうけど、チャンスは待ってくれないからね。雅樹さんに言いにくいんだったら私が伝えとくし。志垣さんが勧めたんなら問題はないはずよ。まぁ、ケイが将来ホストになりたいって言うんなら、話は別だけど?」
私の口から勝手に言葉が溢れだす。
彼にとって有益なことなのだから、それを止める権利はない。もちろん、それを主張する気もない。
いつものように流れのまま、スルーするしかできなかった。
「そういうことじゃなくって……どうして分かんないふりするの、美湖さん」
きつく握られた指先に、じんわりと痛みが走った。
―― ケイはそんな子じゃないのに。
どぎつい仮装をしていることも忘れて表情が揺れないよう目に力を込めると、長いつけ睫毛がまぶたにつき刺さり、またもや目の周りが痒くなってきた。
自分の慌て具合が妙におかしくて、情けなくて。咳払いをひとつしてから言うべき言葉を探した。
「……志垣さんにしては、いい話持ってきたじゃないの。バイトだって雑用だって、チャンスでしょ? ケイの近い将来を考えたら悪くないと思うよ」
コネは多く持っていたほうがいい。それにうまく潜り込めれば、ただ机の上で学ぶよりも実りが大きくて、それだけ可能性が広がるのだ。
「……でも今のバイトが時間的に無理だ」
「ケイは何になりたくて、お勉強してるのよ? 生活も大事だし、学校も大事だろうけど、チャンスは待ってくれないからね。雅樹さんに言いにくいんだったら私が伝えとくし。志垣さんが勧めたんなら問題はないはずよ。まぁ、ケイが将来ホストになりたいって言うんなら、話は別だけど?」
私の口から勝手に言葉が溢れだす。
彼にとって有益なことなのだから、それを止める権利はない。もちろん、それを主張する気もない。
いつものように流れのまま、スルーするしかできなかった。
「そういうことじゃなくって……どうして分かんないふりするの、美湖さん」
きつく握られた指先に、じんわりと痛みが走った。