眠れぬ夜をあなたと
ケイがバイトを辞めれば、この変わった関係も終わる。ギブ アンド テイクが成立しないのなら、一緒にいる理由もなくなる。ないはずだ。
「言ってよ。今まで通り、一緒にいていいって。そしたら俺、美湖さんのとこ、いつでも行くよ?」
「馬鹿だね、ケイ君。そんな時間がなくなるから、バイト辞めるんでしょうに」
まっすぐな瞳は、軽く笑った私を睨みつける。
……可愛い顔して、本気で言ってるんだ。
ケイの目の奥にある熱の強さに気づいた。
「女王様が必要なくなれば、お役ごめんよ」
「お役ごめんなのは俺のほうでしょ? 美湖さんがオーナーに頼まれて、面倒をみてくれてたのは分かってたんだ。それでも……他の誰かがあなたの抱き枕になるの、嫌だ」
意識のあるときに施された初めてのキスは、指先へ落とされた。ケイの蒸気した吐息が、指から心臓へダイレクトに伝わって、体が震える。
俺を受け入れて、と彼の唇が動いた。
女王様ごっこからはじまった、ケイとの関係だ。でも一緒に過ごすときのが、いつの間にか極上の癒やしの時間となっていた。
その時間を、志垣さんの思惑通りに失えば、彼の心の澱みは浄化されるのだろうか。
「美湖さん」
思考の渦に埋もれた私の名前を、呼ぶ声がする。
彼の手を握り返す勇気もないくせに、さりとて振りほどくこともできずにいる私は、石膏のように固まったままだった。
act.4 --end
「言ってよ。今まで通り、一緒にいていいって。そしたら俺、美湖さんのとこ、いつでも行くよ?」
「馬鹿だね、ケイ君。そんな時間がなくなるから、バイト辞めるんでしょうに」
まっすぐな瞳は、軽く笑った私を睨みつける。
……可愛い顔して、本気で言ってるんだ。
ケイの目の奥にある熱の強さに気づいた。
「女王様が必要なくなれば、お役ごめんよ」
「お役ごめんなのは俺のほうでしょ? 美湖さんがオーナーに頼まれて、面倒をみてくれてたのは分かってたんだ。それでも……他の誰かがあなたの抱き枕になるの、嫌だ」
意識のあるときに施された初めてのキスは、指先へ落とされた。ケイの蒸気した吐息が、指から心臓へダイレクトに伝わって、体が震える。
俺を受け入れて、と彼の唇が動いた。
女王様ごっこからはじまった、ケイとの関係だ。でも一緒に過ごすときのが、いつの間にか極上の癒やしの時間となっていた。
その時間を、志垣さんの思惑通りに失えば、彼の心の澱みは浄化されるのだろうか。
「美湖さん」
思考の渦に埋もれた私の名前を、呼ぶ声がする。
彼の手を握り返す勇気もないくせに、さりとて振りほどくこともできずにいる私は、石膏のように固まったままだった。
act.4 --end