眠れぬ夜をあなたと
一粒で二度、いや三度くらいは使い回せるおいしい企画でないと、経費だけがかさんで上層部から白い目でみられてしまうのだ。まったく、せち辛いご時世だ。
「と、言うことで蓮田ちゃん、頼みますわっ」
ペコリと形だけ頭を下げて、上目使いにこちらを見る戸倉さんの顔は、もちろん引き受けてくれるよね、と書いてあるようで。
「台本があるって言っても大筋だけたどってくれれば、問題ないのよ? 一番は話の流れを作ってほしいだけだから。蓮田ちゃんなら年齢的にも素でいけるし、度胸があるから任せて安心なの」
「期待しないでくださいよ、戸倉さん。なんかプレッシャー感じますから」
「大丈夫だって。職業はそのままフリーライターでいいでしょ? 名前は仮名でいいから、うん。ミヤコくらいでいいかな。あとは、嫌ならさりげなく顔出しなしにするし」
「さりげなくって……」
私にモザイク処理でもほどこすつもりなんだろうか。
想像のつかない絵面に微妙な顔をした私を見て、彼女はもうひと押しとばかりに拝み倒した。
「次もいい仕事とっておくから、お願いよ」
「もぅっ。……仕方ないですね」
うまい具合に懐柔させられてしまうのだから、恐るべし戸倉さん。
はふっと口から奇妙な音のため息を漏らし、戸倉さんが置いた薄い台本を手に取った。
「と、言うことで蓮田ちゃん、頼みますわっ」
ペコリと形だけ頭を下げて、上目使いにこちらを見る戸倉さんの顔は、もちろん引き受けてくれるよね、と書いてあるようで。
「台本があるって言っても大筋だけたどってくれれば、問題ないのよ? 一番は話の流れを作ってほしいだけだから。蓮田ちゃんなら年齢的にも素でいけるし、度胸があるから任せて安心なの」
「期待しないでくださいよ、戸倉さん。なんかプレッシャー感じますから」
「大丈夫だって。職業はそのままフリーライターでいいでしょ? 名前は仮名でいいから、うん。ミヤコくらいでいいかな。あとは、嫌ならさりげなく顔出しなしにするし」
「さりげなくって……」
私にモザイク処理でもほどこすつもりなんだろうか。
想像のつかない絵面に微妙な顔をした私を見て、彼女はもうひと押しとばかりに拝み倒した。
「次もいい仕事とっておくから、お願いよ」
「もぅっ。……仕方ないですね」
うまい具合に懐柔させられてしまうのだから、恐るべし戸倉さん。
はふっと口から奇妙な音のため息を漏らし、戸倉さんが置いた薄い台本を手に取った。