眠れぬ夜をあなたと
こんな安っぽい筋書きでも、叔父がニヤニヤ笑いながらオーケーサインを出せばなんとかなるってものだ。

突然の話しに戸惑ったケイも、いろんなことをはかりに掛けたのだろう。

「俺でよければ……」と、おずおずながら返事をしたのだった。



そして今夜もバイト帰りのケイは、律儀にこの部屋へとやって来ている。


「ちゃんとした人って……。俺、ここのところお店でもがんばってるんだよ?」

「まーだまだ。揉めごとが少なくなったのはよかったとしても、客あしらいはうまくないでしょ」

ケイは私の肩をそっとなでた後、まるで骨董品でも扱うような慎重な手つきで、私の体を横たわらせた。

「美湖さん、意地悪だ。これでも最近は、先輩達にも教えて貰ってるし」

息が耳元にかかるくらいの近さでぼやくものだから、くすぐったくて首を竦めてしまう。

テレビの向こう側では、すれ違いつづけた男と女が、雨のなかで見つめ合っていた。

「……ねぇねぇ美湖さんの部屋ってさ、ちょっとしたレンタル屋さんみたいだよね。いったい何本くらいあるの?」

「あ~、数えてないから知らないけど。そこそこね」

「美湖さんって…もしかして洋画の方が好きなの?」

「や、こっちのが眠れるんだよね」

たとえ、その睡眠がまどろむ程度のものだとしても。

裏を返せば、これがないと眠れない。
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