拝啓
『私ね。貴女にも会ったし、貴女の父親にも会ったわ。
その時、私と淳は別れていた時期だったからあの人の前では話したくなかったの。』
私は黙って頷いた。
『私と彩は同じ年だったけれど、彩は結婚したのが19歳で同じ年に貴女を産んでいた。
成人式の時、私は彩の実家に行ったの。
そして、彩と貴女に会ったわ。
その頃のあの子、痩せて疲れた顔をしていた。
でも、頑なに幸せだと言っていた。
後から、淳に聞いた。
結婚生活がとても不幸せだったと。』
そう言うと、私を懐かしそうに見つめた。
『貴方は本当に可愛い赤ちゃんで、私の家に訪ねた帰りに、冬也君の家に寄ったの。』
私は母が私は1度【冬也】さんに会っていると言った事だと思った。
そして、女性に質問した。
『その時、母はどんな話を冬也さんとしたんですか?』
すると、その女性は辛そうに口を開いた。
『冬也君も結婚して、確か奥さん妊娠していたわ。
彩は冬也君の結婚式の写真を嬉しそうに見て、冬也さんの話を楽しそうに聞いていた。
私はその時の彩の顔が忘れられない程、幸せそうにしてたの…。
自分の結婚生活が悲惨なのに、何故まるで自分の幸せのように嬉しそうな顔が出来る彩があまりに切なくて、冬也君の家から帰るとき彩に聞いたわ。』
『何て聞いたんですか?』私はそれが知りたかった。
『何故そんなに嬉しそうに出来るの?って。そしたら、嬉しそうに答えたの。』
私の目を見て女性は涙を浮かべて話を続けた。
『だって、冬也、嬉しそうで、幸せそうだったから。私はそれがとても嬉しいよ。ってそう言って本当に嬉しそうに私に言うのよ…。自分の事より嬉しそうに…。それ以上聞けなかった…。だって、あんまりなんだもの。
私は智恵美が大嫌いだったから、話もしなかったけれどね…。
彩は仲間をとても、とても大切にしていた。その頃の話は淳に聞いた方が良いと思うわ。』
そう言うと、女性は立ち上がり、階段下から上にいる旦那さんに声をかけた。
『淳。もう良いわよ。降りてきて。』
するとタンタンと階段を降りてきて女性の横に座って私に向かって言った。
『俺と彩と冬也、それに徹は同じバイトだったんだよ。初めは徹と彩。そして、冬也、最後に俺がバイトに入ったんだ。』
男性は思い出しながら目線を何処か遠くを見つめるようにしながら話始めた。